耐震診断・耐震改修
大地震で倒壊しない耐震性(強さ)があるか調査し、確認することです。耐震診断の目的は、お住まいの弱点を認識し、具体的な対策をたてることにあります。
耐震診断で明らかになった改善ポイントに基づいて、耐震リフォームを検討しましょう。
地震対策の第一歩は、家の耐震性を調べることから始まります。
住宅の耐震基準は、大地震が起きる度に厳しくなっています。
皆様のおうちについて、2000年に改正された現在の建築基準と比べてどのくらいの耐震性があるか確かめるのが「耐震診断」です。
「建築基準法」の改正で変わる耐震基準
「建築基準法」で定められた建物の耐震性能は、大地震による被害を受けて強化されてきました。
大きく基準が変わったのは1981年と2000年。1981年以前の建物は「旧耐震基準」と呼ばれ、1978年に発生した「宮城県沖地震」の甚大な被害を受けて、抜本的に改正されました。
熊本地震では、1981年から2000年に建てられた建物にも大きな被害が生じました。
耐震診断は、調査員が伺い、約2時間の調査(屋内・屋外・小屋裏など)を行います。
床下や天井裏にもできるだけ入り、筋かいは適切に施工されているか、雨漏りの跡や傷んでいる木材はないかなどを確認します。
調査項目は、間取り・壁の材質・筋かいの有無・屋根の重さ・劣化状況(基礎のヒビ割れ・外壁の割れ・雨染み)など多岐にわたります。


耐震診断の方法は、(一社)日本建築防災協会が定めています。詳しい内容は『2012年改訂版「木造住宅の耐震診断と補強方法」』に記載され、この診断法は全国で用いられています。
耐震診断の調査結果から耐震診断書を作成します。
耐震診断の結果は、総合評点に基づき4段階で評価します。

そのうち上2つ、総合評点1.0以上の「倒壊しない」・「一応倒壊しない」であれば、耐震性があると判断されます。
一方、「倒壊する可能性がある」・「倒壊する可能性が高い」の場合は、大地震によって大きな被害が生じる可能性が高いため、耐震補強による対策が必要となります。
耐震診断では、人命保護に重点を置き、「大地震時に倒壊しない」ための耐震性確保を目的としています。
■耐震補強とは■
耐震補強工事は大きく分けて4つの方法があります。
01.壁を強くする・増やす
強い壁を増やすことが耐震補強の第一歩。現在の壁を耐震性の高い壁にすることで、「壁の量(強さ)」を増やし、「壁の配置バランス」を改善できます。
構造用合板や筋かいによる補強もありますが、耐震補強部材メーカーが開発した耐震性のより高い工法もあります。
また、壁の補強を行う際には、柱が引き抜けないように金物でしっかり固定することが重要です(柱頭・柱脚接合部)。
1995年に発生した阪神・淡路大震災では、このつなぎ目を金物で固定することが義務づけられていた3階建ては倒壊被害が少なく、義務化されていなかった2階建て以下の木造住宅に甚大な被害が発生しました。
その後、2000年に建築基準法が改正され、2階建て以下も金物による固定が義務化されました。
![]() 内壁耐震補強 | ![]() 内壁耐震補強 |
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![]() 外付けホールダウン金物 |
02.基礎を強くする
壁を強くしても足元の基礎が丈夫でないと耐震性を発揮できません。
基礎の補修や補強には、主に3つの施工があります。
■1.「補修」ひび割れを補修する
![]() 基礎の補修 |
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ひび割れが生じている基礎にエポキシ樹脂などを注入し穴を塞ぎます。
これは、基礎を強くするというよりも、ひび割れがよりひどくならないようにするための工事。
また、鉄筋が入っている基礎の場合、雨水によって基礎がさび付き、基礎が割れてしまう「基礎の爆裂」を防ぐ事が目的です。
■2.鉄筋コンクリート造の基礎を足す
鉄筋が入っていない無筋の基礎に、鉄筋コンクリート造の基礎を足しています。
基礎の「増し打ち」と呼ばれ、鉄筋コンクリート造の基礎を抱き合わせて一体化させる工法です。
壁が強くても、足元(基礎)の踏ん張りが効かないと壁本来の強さがでません。
無筋基礎の上にある壁は耐震性が低く評価されるため、壁の補強とセットで行うことで補強箇所数を抑えることができます。
■3.「基礎の新設」基礎を新たに設置する
既存の基礎がある壁を補強しても、目標とする耐震性とならない場合など、壁補強を考える上で、どうしても新しく壁を作る必要が出た場合などは、基礎を新しく設置します。
03.木材が腐ったり、シロアリで傷んだ箇所(劣化)を直す
木材は腐ってしまうと本来の強さを発揮することができなくなり、耐震性が大きく低下します(最大3割減)。
特にお風呂や洗面所など水廻りが多い北側は要注意です。
土台が腐朽またはシロアリ等の被害を受けている場合、傷んだ木材を取り外し交換します。その際、防腐・防蟻処理を推奨しています。
また、腐朽・防蟻対策として、床下に調湿炭を敷き詰めることも効果があります。
04.屋根を軽くする
耐震診断では、屋根や壁の重さ(建物重量)が重たいほど、それを支える為に必要な壁の強さ(量)が大きくなります。軽い材料の屋根に葺き替える(軽量化)ことでで、揺れにくくなり耐震性が向上します。
重量のある日本瓦や土葺き瓦の住宅は頭が重たいため、地震の時に揺れやすくなります。
しかし、屋根(建物)の重さに見合った壁の強さ(耐震性)があれば問題はありません。瓦屋根が耐震性を損なっているのではなく、重さに見合った壁の強さがないことで耐震性が十分でないケースがあります。
【+αの制震】制震ダンパーで揺れを吸収!
2016年4月に発生した熊本地震では震度7の揺れが2回も発生し、1回目の揺れでダメージを受けた建物が再び大きく揺らされることで倒壊被害が拡大しました。
そこで注目されているのが「制震ダンパー」。「ダンパー」と呼ばれる特殊な装置で揺れを吸収することで、建物に伝わる地震の揺れを軽減します。
耐震に制震をプラスアルファすることで、より安全・安心な住まいになります。